2018年6月から住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)が施行されると発表がされています。
その中で民泊に関わる3つの業者が役割を割りあてられました。
それは
- 住宅宿泊業者(民泊オーナー)
- 住宅宿泊管理業者(民泊代行業者)
- 住宅宿泊仲介業者(民泊マッチングサイト)
の3者です。
この記事では2の住宅宿泊管理業者について解説していきたいと思います。
既に存在している
さきほど割り当てられたといいましたが、住宅宿泊管理業者はもっとわかり易い言葉で言うと「民泊代行業者」です。
国土交通省があたらしく3つの役割を制度として作ったような感じがしますが、中身を見てみると呼び名を法律っぽくしただけで、既にその役割を担う企業は存在していて、現在も活動しています。
ではなぜ制定されたのか
国がこの度の民泊新法を作った目的の一つに無許可の民泊(ヤミ民泊)の一掃という部分があります。
今では「ヤミ民泊」の言葉どおり、簡易宿所営業の許可や、特区民泊の認定を受けていない民泊は違法行為(ブラック)として知られていますが、もともと無許可の民泊はグレーとされていました。
いまでも一部にグレーを主張する人たちはいますが、彼らの言い分もわからないことはないです。おそらく彼らが言いたいのは、
「もともとはホワイトもグレーもブラックもなく、今の民泊の形態ができた。それを国があとから規制するために無理矢理旅館業法に当てはめた。当てはめられる前からやっていた私たちは今でも法律の外(つまりグレー)じゃないか。」
と、こういうところではないでしょうか。
9割が無許可営業
グレーを主張する、しないは別としても現在の民泊のおよそ9割近くは無許可の民泊です。
ということは必然的に既存の民泊代行業者のほとんどがヤミ民泊の手伝いをしているということが言えます。
「でも旅館業法違反という違法行為をしているのは民泊オーナーで、代行業者は代行サービスをしただけ」という声が聞こえてきそうです。
確かにそうですが、それでも代行業者が検挙された例はありますから、政府としては「代行サービスをしただけ」という風には捉えてないようです。
政府がヤミ民泊を撲滅するためには民泊オーナーだけを把握するだけでは足りません。
冒頭の住宅宿泊管理業者(民泊代行業者)、住宅宿泊仲介業者(民泊マッチングサイト)もすべて届出、登録させることで把握していこうというのが民泊新法のねらいの一つです。
国土交通大臣への登録
住宅宿泊管理業者となるには国土交通大臣へ登録をしなければなりません。
登録料9万円がかかります。
また、5年毎の更新があり、更新の際には19700円かかります。この部分は新設された制度という感じがしますね。
既存の代行業者のみなさんは、今まではお金をかけること無くできたのでそのほうが良かったと感じるかもしれません。
しかし、考え方を変えると、5年間で割れば1年間18000円で国土交通大臣のお墨付きがもらえるということになります。堂々と営業しましょう。
もちろんこれは行政への登録ですから、この登録が済んでしまえばそれ以降は無許可の民泊の代行はできないということになります。
いままでもグレーではなく、ブラックでしたが、今後はその部分がもっと明確に違法となります。
ということは、裏を返せば無許可のオーナーは今まで頼んでこれた代行業者にはもう頼むことができません。
こうすることで、政府は外堀を埋めていくように、制度としてヤミ民泊を撲滅しようと必死なのです。
⇒あなたもできる!住宅宿泊管理業者の登録申請書の書き方
財産要件・資格
支払不能に陥っていないこと
支払不能とは、払わなければならないお金などを払うことができない状態のことです。
民泊オーナーの住宅やお客さんの安全管理などをしていく仕事なので、途中で「継続できなくなったからやめます」では困りますよね。いくらとは決まっていませんが、財産的基礎があることが求められます。
資格か経験が必要
さらに、住宅宿泊管理業を行うには次のどれかを満たす必要があります。不動産関係の事業所以外では少々ハードルが高いと思われます。
個人の場合
- 住宅の取引や契約の業務に2年以上従事したもの
- 宅地建物取引士
- 管理業務主任者
- 賃貸不動産経営管理士
法人の場合
- 上記の資格を持つ従業員がいること
- 宅地建物取引業者の免許を受けていること
- マンション管理業者の登録を受けていること
- 賃貸住宅管理業者の登録をうけていること
⇒宅建とかの資格ないけど、民泊代行業者を続けられる?はい、大丈夫です。
仕事内容
住宅宿泊管理業者としての主な仕事はこれまでの代行業でやってきた事の、
- 施設の鍵の管理
- 衛生管理(チェックアウト後の清掃など)
- 宿泊中の施設利用者からの問い合わせへの対応
- 周辺住民からの苦情・問い合わせへの対応
などに加え、新たに管理義務が発生しますのでこれもやらなければなりません。
宿泊者の管理義務
宿泊者名簿を備え付け、宿泊者の氏名・住所・職業を記載し管理します。3年間の保存義務があります。
また以下のことを住宅宿泊業者(オーナー)に報告しなければなりません。
- 報告の対象となる期間
- 住宅宿泊管理業務の実施状況
- 住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の維持保全の状況
- 住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の周辺地域の住民からの苦情の発生状況
需要はあるけど
住宅宿泊管理業者の今後の需要はあります。
現在ある民泊施設の7割が家主不在型の民泊と言われています。いわゆる投資型民泊です。
民泊新法が始まったら、この施設の管理をそのまま任されることになりそうな感じもします。
しかし、オーナーの立場からすると、民泊新法では年間最大180日の営業制限があるので、もともと投資して稼ぐはずの民泊が今よりも確実に稼げなくなります。
その上、宿泊事業管理業者に代金を払って管理を任せるとなると、さらに収益率がさがってしまいます。
ですから、いままでは丸投げだったオーナーも自ら住宅宿泊管理業者の登録をして、できる部分は自分でやるというスタンスも増えることが予想されます。
さらに、不動産業界や旅行業界の大手企業がこの管理業に参入してくる準備をしています。
もともとの自分たちのフィールドを取り返すべく民泊新法の施行を待ち望んでいます。
供給もある
結論としては需要はあるけど、供給もあります。ということは今よりも競争が激しくなると見られています。
住宅宿泊管理業者の登録申請をする人が最初に読んで欲しいガイドページ
終わりに
いかがでしょうか、民泊新法で新しくできた制度の住宅宿泊管理業者について解説してきました。
繰り返しになりますが、民泊新法の施行は2018年6月15日です。これを書いているのは2017年12月15日ですから、施行までちょうどあと半年ということになります。
この記事を読んでくださったあなたに気をつけていただきたいのは、あと半年の間でまだいろいろなことが変わる可能性があるということです。
東京、京都、大阪、北海道などではそろそろ独自の条例も決まり始めています。
現在のところ、上記の自治体では法令よりも厳しめに規制される方向です。
今後自治体が追従するのか、もっと重大な動きがあるのかまだわかりません。
あわてずじっくり検討されることをおすすめしたいと思います。