民泊のガイドラインが出たけど、それでも地域でバラバラな理由

観光庁などの関係省庁から2017年末の12月26日に住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が発表されました。

これはどういう物かといいますと、2018年6月に施行が決まっている、住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)の内容を詳しく、具体的に記載したものです。

なんで?法律が始まる日はもう決まってるのに、あとから詳しい内容をだしてくるの?それに詳しい内容は自治体の条例で決めるんじゃないの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

そうです、もともと法律というのは最初からそんなに細かいことまで決めることはしないのです。というか、決めることができません。

しかしながら、なるべく早く法律を作って規制を始めなければいけない、という事情もあります。今回のように、放っておいたらどんどんヤミ民泊が広まってしまい、それがスタンダードになってしまってはマズイというような理由もそのひとつです。

なので、先に大枠だけ作って、その中身を決めるのにどれくらいの時間がかかるのかを測った上で、法律施行の期日を決めるのです。

そんな中、満を持して今回の要領(ガイドライン)が出されました。この記事では、このガイドラインに何が書いてあって、どんな効力があるのかを見ていきたいと思います。

これを読むことで、今後の民泊新法に政府が何を求めているかがわかるようになります。

それでは最後までお付き合いいただければと思います。

 

目次

要領(ガイドライン)とは役所向けのマニュアル

今回の要領(ガイドライン)の立場はどんなものでしょうか。

「住宅宿泊事業法施行要領」というなんともカタイ感じのする名前から想像するに、法律のような感じがするという方もいると思います。法律だとすれば私たち国民は守ることを義務付けられます。

しかし、これは法律ではありません。また、法律よりももっと大きなくくりである法令の中にも含まれません。

簡単に言ってしまいますと、要領とはマニュアルです。お役所が事務仕事を進めていく上での指針・基準を示したものです。

今回このマニュアルを作ったのは国の機関である国土交通省や厚生労働省です。

実際に民泊新法が始まったときに、民泊を始めたい人を相手に手続きをする県や市や保健所などの役所に向けて、わかりにくいかもしれない部分をわかりやすく、マニュアルを作ったというところです。

よって、これに書かれていることを絶対必ず守らなければいけないという性質のものではありません。もちろん私達国民も拘束されるようなものではありません。しかし、これから民泊事業に参入しようとお考えのあなたにとっては注目の内容となっています。

【住宅宿泊事業法施工要領(ガイドライン)本文】(観光庁のページに飛びます)

 

政府側の思い

ガイドラインに拘束力はないけど

マニュアルですので、もともとの民泊新法の条文に書いてある以上に、「もっとこうしなさい」「こうしてはいけない」というような効力は無いのは上でも述べたとおりです。

しかし、作った側の国土交通省にすれば、この法律に対する細かな「基本的な考え方」や「姿勢」「イメージ」をガイドラインの中で示すことで各地方自治体を自分たちの描く方向へ引っ張りたいという思いはあるのです。

拘束力こそ無いですが、先にこういったものを示すことで、全く反対の動きをあらかじめ牽制することができるという効果はあります。

何と言っても国が目指す民泊新法の目的は大きく2つ、

  1. 観光に寄与するため民泊をもっと広げたい
  2. そのためには、問題のヤミ民泊を根絶したい

この規制しながら普及させるという難しいバランスをとることを全力で推進していかなければなりません。

できればもっとはやく手を打つつもりではありました。しかし、こっちを叩けばあっちがでてくる、というように、なかなか簡単には進まないのです。

 

地方自治体側の思い

遅かったガイドライン

このガイドラインが出される2週間ほど前に、すでに東京都の大田区と新宿区では条例が成立しています。

私はこれには2つの理由があると思います。

  1. 時間がないこと
  2. やられるまえに、やれのスタンス

本来の流れであれば、国が作ったこのガイドラインの内容を見て、各地方自治体が必要に応じてそれぞれの地域に対応した条例案を作るという流れが本筋だと思います。

しかし、それを待っていると地方自治体側も時間がなくなってしまいます。民泊新法の施行は6月15日ですが、その3ヶ月前の3月15日から届出の受付が始まります。

また、条例を作るにはパブリックコメントの募集などもするのでそういう事も踏まえるとやはりタイトなスケジュールになります。ということでドンドン決めてしまった結果ガイドラインより早かったという理由がひとつです。

 

あともう一点私が思うのは、先程も述べたようにガイドラインが出てしまえば、いくら法的な拘束力はないと言っても、真っ向から対決するようなルールは作りにくくなるでしょう。作るなら今です。

つまり、「やられるまえに、やってしまえ」の方法論がとられたと思うのです。

実際に大田区も新宿区も、住居専用地域での民泊の営業を大幅に制限することをルールとして決めています。

大田区は全国で初めて特区民泊が導入された区で、新宿区は東京都でも最多の宿泊物件を抱える区として、どちらも全国的に見て他の自治体への影響力が非常に強いと言われています。

これに追従するように、北海道や大阪、京都市なども厳し目な条例案をだしています。

 

ガイドラインが求める条例での制限

ガイドラインでは、各地域での条例での制限をこれぐらいにしてほしいというようにいっています。簡単にまとめます。

基本的な考え方として

民泊に対して、事業の実施そのものを制限するような制限は行き過ぎです。でも生活環境の悪化を防止する必要がある時には合理的と認められる限度において、例外的に民泊の実施を制限するのを認めます。というものです。

区域の設定

住居専用地域全域というように広範な区域を制限の対象と仕様とする場合には、もともと住居専用地域でも民泊ができるようになることが目的だったことを十分踏まえつつ、きめ細やかに検討し、特に十分な検証を行う必要がある。としています。

本当に本当によく考えてくれよ、という思いが伝わってきます。

期間の設定

月や曜日を特定して設定して、年間の大半が制限の対象にあたるような場合には、その制限によって営業が事実上できなくなるなどの過度な制限となっていないか、十分な検証を行い、民泊新法の本来の目的や規定に反することがないようにする必要がある。としています。

ゼロ日規制について、

年間すべての期間や、都道府県の全域を制限することは民泊新法の目的を逸脱するもので適切ではない。として、バッサリ否定しています。否定していますが「適切ではない」にとどまりますので、やはり拘束力はありません。

家主不在型について

家主不在型であっても、住宅宿泊管理業者への委託により家主居住型と同様に事業の適正な運営の確保が図られているので、家主不在型と家主居住型を区分して制限を行うことは適切ではない、としています。

 

条例で制限しても良い例

以上のことを踏まえて、条例で制限するときの例もあげています。

A、静音な環境の維持及び防犯の観点から学校・保育所等の近隣地域において、住宅宿泊事業を実施することにより、学校・保育所棟の運営に支障をきたすほどに、現状では保たれているその生活環境が悪化する恐れのある場合
区域:当該施設周辺の一定の地域
期間:月曜日から金曜日まで(学校の長期休暇中は除く)

B、静音な環境を求める住民が多く滞在する別荘地において、住宅宿泊事業を実施することにより、現状では保たれているその生活環境が悪化する恐れのある場合
区域:別荘地内
期間:別荘地の繁忙期となる時期

C、狭隘(きょうあい)な山間部等にあり、道路事情も良好でない集落において、住宅宿泊事業を実施することにより、道路等の混雑や渋滞を悪化させ、日常生活をいとなうことに支障が生じ、生活環境を損なう恐れのある場合
区域:当該集落地域
期間:紅葉時期等例年道路渋滞等が発生する時期
*駐車場がない、あるいは公共交通が著しく不足している等の事情のある場合には、都市部でも同様の考え方により地域・区間を定めることはあり得る。

住宅宿泊事業法施工要領(ガイドライン)P30より抜粋

 

 

まとめ

2017年12月のおわりに民泊新法の運用の指針となる住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が出されました。

この中で、条例による民泊新法の制限の方法に触れました。それはもともと地方自治体がその地方の事情に沿って決定してもいいとされているルールです。

それこそ都市部や田舎の方では人口が違いますし、持っている観光資源によっても季節の要因などが考えられますので一番いいルールづくりをしようとするはずです。

しかし、現状ではヤミ民泊の横行により、民泊を迷惑と捉えている人の声が目立っています。もちろん民泊には数々のメリットが有るのですが、苦情を訴える国民を自治体は無視できず、また、それによりきつめの規制になる自治体に対しても国は強く出れないというジレンマがあります。

最終的にはルールは決められたら守らなければなりませんので、あなたが民泊に関心があるならできるだけパブリックコメント制度などにも参加してみましょう。

 

 

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この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

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