【2017.12.26の住宅宿泊事業法施行要領(民泊新法ガイドライン)対応】
今話題の民泊新法(住宅宿泊事業法)ですが、2018年6月から施行されることが決まっています。
これまでは、昔ながらの旅館業法を無理やり民泊に当てはめて運用していた部分があったので、この度ようやく民泊専用の法律ができた、というところでしょうか。
旅館業法の許可を取るのはややハードルが高い!といわれていて、民泊を始めたくても始められなかった人など、多くの人が期待して待ち望んでできたのがこの法律です。
この先、都道府県や市町村で条例により細かい規則が決まっていくことで、どんどん民泊の制度が具体的になっていきます。
この記事では、まだ施行前の現時点での民泊新法による民泊のはじめ方について解説していきます。
観光庁住宅宿泊事業法の概要より抜粋
届出は3月15日から
実際に法律が実施されるのは2018年6月15日ですが、その3ヶ月前から住宅宿泊事業者(ホスト)は届出をすることができます。
届出ると番号がもらえますので、この届出番号をAirbnbなどの仲介サイトに通知します。
(様式は変更になる可能性もありますので、こちらは参考程度として、実際には最新のものをお使いください。)
ところで、民泊新法による民泊は旅館業営業許可の許可制とはちがい、届出制です。この部分が現行の旅館業法に比べて非常に緩くなる部分です。
許可と届出の違い
許可と届出の違いがイマイチよくわからない、そもそも違うの?という方もいらっしゃると思いますので、ここで簡単に説明したいと思います。心配ありません、ちょっとイメージしていただければわかることです。難しくありません。
許可とは
許可とは、もともと禁止されている事を、一定の条件を満たした人だけに行政が許し、おこなってもよい、とすることです。
例えば自動車の運転です。
日常的なことですので普段意識しませんが、考え方としては自動車の運転は、法律によってもともと全面的に禁止されているものなのです。
その中で、自動車学校に通うなどして苦労して技術と知識を習得し、普通自動車免許の試験に合格した人だけが公安委員会に許されて、一般の公道で自動車を運転できます。
つまり、許可とは禁止を解いてもらうだけの根拠を備える必要があるということです。そのために学校で技術や知識を習得するというような、一定の手間がかかります。
届出とは
一方届出とは、元々禁止されているわけではない事を、手続きするのです。
考え方としては、
「誰がやってもいいんだけど、やる場合には誰がやっているのか把握したいので「やります」と行政にひとこと知らせる」
という手続です。
この「やります」と知らせるのが届出です。やりますといういわば一方通行の宣言なので、それに対して行政から「やっていいよ」とか「やっちゃダメ」といった判断はありません。
届出る書類さえキチンとしたものであれば届出た時点で手続は完了です。
住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者への委託
あなたが「家主同居型」で民泊を運営するのであれば、新たに住宅宿泊管理業者へ委託する必要はありません。
そもそもあなたが家主としてお客さんをもてなし、楽しんでもらうことを自分の楽しみとする。そんな風なスタイルでしょうから、他人の業者をわざわざ介入させたくない、とも考えるかもしれません。それはとても理にかなっていて、私はこれが民泊の王道だと思います。
しかし、例外的に家主同居型でも住宅宿泊管理業者への委託が必要な場合があります。
- 6部屋以上の居室の管理業務をしようとするとき
- 人を宿泊させる間におよそ2時間以上外出して不在となるとき
以上の2つに該当する場合は家主同居型でも委託が必要になります。
また、委託後も家主の責任で実施しなければならないものがあります。
- 宿泊サービス契約の主体
- 標識の掲示
- 宿泊日数等の報告
以上の3つは家主である限り責任を持ちましょう。
⇒家主居住型?家主不在型?民泊新法の2つのタイプを解説します。
家主不在型の場合は民泊運営代行業者に管理業務を委託しなければなりません。また、その民泊運営代行業者は国土交通大臣に登録申請している住宅宿泊管理者でなければいけません。
国は民泊の状況を把握し、自らの管理下に置きたいと考えているのです。
法11条
住宅宿泊管理業者の登録も”民泊制度運営システム”によって申請します。この申請にかかる標準処理期間は90日となっていますので、法律施行と同時に住宅宿泊管理業をスタートさせたい方は3月15日に申請する必要があります。余裕を持って準備しておきましょう。
住宅宿泊事業者についてはこちらで詳しく解説しています。
⇒知っておこう!住宅宿泊管理業者って、民泊代行業者からの移行です。
管理業者登録の申請書類についてはこちら
⇒あなたもできる!住宅宿泊管理業者の登録申請書の書き方
法23条
また、Airbnbなどのマッチングサイトとも委託契約を結びます。
法12条
住宅に設ける設備
民泊新法の正式な名前は住宅宿泊事業法といいます。その名の通り、住宅に人を宿泊させることについての法律です。
旅館業法は、旅館やホテルなどの宿泊施設に宿泊させる事についてまとめているので、この部分がちがいます。
住宅というからには人が住める設備が整えられていなければなりません。それは次の設備です。
・台所
・浴室
・便所
・洗面設備
・その他、家屋を生活の本拠として使用するために必要なもの
これらの設備は、届出住宅に設けられている必要があり、近隣の公衆浴場を浴室として代替えすることはできません。(特区民泊では代替えが認められています。)
また、これらの設備は必ずしも独立しているものでなくてもよく、3点ユニットバスがあれば浴室、便所、洗面設備の機能を持つ設備とすることができます。
さらに、一般的な機能があれば足りるとされているので、例えば浴室に浴槽がなくてもシャワーがあれば足り、便所は和式か洋式は問われません。
法2条1項2号
宿泊させる日数のきまり
民泊新法では、1年を通じて宿泊の営業をしてよい日数を180日と決めています。180日といえばおよそ1年の半分ですね。もしあなたが残りの半分でもっと利益を出したいなら部屋を賃貸するなど、何か方法を考えなければいけません。
また、この180日という日数は法律が定める日数です。県や市や区によっては、条例でもっと短い日数に制限される可能性もあります。
法律よりも条例が優先するので、あなたが民泊を始めようと思っている地域の条例が、180日より短い日数に制限すると決めた場合、あなたはもしかしたら納得がいかないかもしれませんが残念ながらそれに従わなければなりません。
これはなぜかというと、今現在運営しているホテルや旅館に配慮しているからです。ホテルや旅館は民泊よりも大掛かりな設備を入れ、厳しい基準をクリアすることで営業許可を取得して運営しています。
以前から宿泊事業を営んできた彼らを新しくできた民泊制度と同列に並べてしまうことはできないのです。民泊が広がって旅館やホテルが廃れていっては本末転倒です。
どちらにも宿泊客の受け皿として発展させたい思いがあり、そのバランスとしての規制が入ることがあるということなのです。
法2条3項
宿泊者の安全の確保
民泊に泊まる人にとっては楽しい旅行中ですが、いつ何時、何が起こるか分かりません。そんな時にのために宿泊者の安全を確保するための用意をしておかなければなりません。次のようなものです。
- 非常用照明器具
- 避難経路の表示
- 火災その他の災害が発生した場合の安全を確保するための措置
法6条
外国人宿泊者の快適性、利便性
民泊は外国人旅行客を民家に泊めることを想定しています。もちろん日本人も泊まれますが、外国語での表示をしましょうと定めています。
外国語というのは英語でも中国語でもフランス語でもOKです。日本語以外の外国語での表示ということです。
あなたが泊まってもらいたいと思うお客さんの国の言葉を選ぶと良いと思います。もし多くの国の人に来てもらいたいのなら、複数の国の言葉で表示をしましょう。あなたの提供する部屋のアピール材料にもなりますね。
外国語で表示するのは次の事項です。
- 設備の使用方法に関する案内(家電製品など)
- 移動のための交通手段に関する情報(最寄りの駅、電車・タクシー・バスの乗り方など)
- 火災、地震、その他の災害が発生した場合の案内(消防署、警察署、医療機関、住宅宿泊管理業者への連絡方法についてなど)
法7条
宿泊者名簿をそなえる
あなたが民泊として提供する住宅、(営業所または事務所を設置するのであればそちら)に、宿泊者の名簿を作成し、3年間保存しなければいけません。紙の帳簿でなく、パソコンのデータとして保存してもOKです。
これは本人確認を確実に行うための決まりです。万が一テロリストの潜伏や、感染病の拡散があったときに必要な情報になります。
本人確認の方法
本人確認の方法は対面での確認のほか、ICT(情報通信技術)での方法もあります。
ICTの方法は具体的には届出住宅に備え付けたテレビ電話やタブレットで行いますが、次の条件があります。
- 宿泊者の顔とパスポートが画像で鮮明に確認できること
- その画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所など、届け出住宅内または届出住宅の付近から発信されていると確認できること
宿泊者名簿への記載
宿泊者名簿には、宿泊者全員を記載します。代表者のみでは認められません。
- 宿泊者の氏名
- 住所
- 職業
- 宿泊日
- 外国人観光客には国籍とパスポート番号(パスポートのコピーを取ることで代替えできる)
を書いてもらいます。
⇒宿泊者名簿備え付けが義務です。しっかり記入いたしましょう。
また、長期滞在者には定期的な清掃などの際にチェックイン時に本人確認をしていないなどの不審なものが滞在していないか、反対に滞在者が所在不明になっていないかなどを確認しましょう。
特に一週間以上の宿泊契約の場合には定期的な面会で確認する必要があるとされています。
法8条
周辺地域への配慮を説明する
繰り返しになりますが、あなたの民泊に泊まる人は旅行者です。
想像してみましょう。あなたも旅行中は非日常を満喫し、気分も開放的になることがあると思います。夜になれば昼間の出来事を振り返りつつ、仲間とお酒で盛り上がったりすることもあるでしょう。
もちろん盛り上がることは大いに結構で、民泊提供者としては、部屋で存分に楽しんで行って欲しい気持ちはあります。
しかし、繰り返しになりますが、民泊は外国人観光客の利用を想定しています。彼らには悪気なく過ごした時間が、近隣住民にはどうしても我慢ならないなんていうこともあるかもしれません。
自分の部屋を選んでくれたお客さんに対して、あまり禁止事項なんて作りたくないというのはおそらく日本人特有の優しいいい部分でしょう。
それでも事業としてある程度のルールは説明しておかなければいけません。周りに住んでいる人もいるので配慮しましょうということを書面で説明します。
また、このことが確実に守られるよう、居室内に電話を備えて事前説明に応じない宿泊者に対して注意喚起できるようにしておく必要があります。
騒音防止について
例としては
- 大声での会話を控えましょう
- 深夜には窓を閉めましょう
- バルコニーなどの屋外での宴会はやめましょう
- 楽器の使用はやめましょう
というようなことを注意書きしておきましょう。
ゴミの処理について
民泊の施設で出たゴミは、廃棄物処理法にしたがって、住宅宿泊事業者(オーナー)が責任を持って処理をしなければならないという決まりになっています。宿泊者の出したゴミはオーナーに責任があるということです。
宿泊者は近所のゴミ集積場に持っていくことをせずに、届出住宅内の適切な場所にゴミを分別して捨てましょう、ということをきちんと説明しておきましょう。
火災防止について
いうまでもなく火災は一番怖いことです。近隣に迷惑をかける度合いが突き抜けています。
- ガスコンロの使用方法
- 元栓の開閉方法
- もし出火してしまったときのための消化器の使用方法
- 避難経路
- 通報の方法
などをしっかりと説明しましょう。
その他周辺地域の生活環境への悪影響防止に必要な事項
法9条
また、これはあたりまえのことですが、事業者であるあなた自身も周辺住宅の住民から苦情や問い合わせがあった時には、適切に迅速に対応しなければなりません。
その為というわけではないですが、普段からご近所さんには誠意ある対応をしておきましょう。理解が得られていると民泊の運営もしやすいですよね。
法10条
標識の掲示
事業者は、そこで民泊をやっていますよと周りの人に知らせるために、国が定める様式の標識を掲げなければなりません。
標識は届出住宅の門扉、玄関などの、概ね地上1.2メートル以上、1.8メートル以下の高さで、講習が認識しやすい一に掲示することが望ましいとされています。
適法に運営していることを堂々と示しましょう。
法13条
2ヶ月ごとに報告
上でも述べましたが、国は民泊の状況を知りたいのです。データとして集めてもっと活用していこうということでしょう。
そのために運営側としてはちょっと頻繁で面倒ですが、ここはひとつ、きちんと報告しましょう。
年間を通して、偶数月の15日までに前2ヶ月の次の事項を都道府県知事に報告します。
- 人を宿泊させた日数
- 宿泊者数
- 延べ宿泊者数
- 国籍別の宿泊者数の内訳
法14条
⇒法14条の規定|2ヶ月毎の定期報告のお知らせメールが来ました。
まとめ
いかがでしょうか。
2018年6月15日から始まる住宅宿泊事業法(民泊新法)の概要を住宅宿泊事業者(ホスト)に関係のある部分についてまとめました。ここでまとめたのは住宅宿泊事業法、関係施行規則に載っているものです。
今後各自治体ごとに条例が定められて、さらに規制される部分が出てくることが予想されます。政府は民泊を広げていきたい考えですから、合理的な理由がある場合に限り条例で制限できるとしていますが、すでに京都や北海道では厳しめの条例案が出ています。
まだ法律の施行までには時間があるので、これから色々な変化があるのではと考えています。せっかくの新法なのであまり強い規制にならない方向で進んでくれるとありがたいですね。
是非参考にしてください。
*右の方に法◯条と書いてあるのは住宅宿泊事業法の条文のナンバーです。