新宿区でパブコメを通じて民泊新法の条例がでました

民泊新法(住宅宿泊事業法)が2018年6月より施行されることがきまっています。法律施行までの間に各都道府県や区で独自のルールが検討されて、徐々に発表されてきています。

なぜ独自のルールを作るのかというと、扱うものが宿泊施設という都合上、地域によって事情がぜんぜん異なるからです。

例えば2020年東京オリンピックを見据えて、それまでに増加する外国人観光客をもっと取り込みたい!というAの街は民泊に対して積極的になるはずです

反対にBの街にはもうホテルや旅館がたくさんある、むしろ余っていて既に民泊トラブルも多いというのであれば、行政は民泊には消極的になります。

ABそれぞれの自治体の議会で話し合われて、法律で決められた範囲内でその地域にあったルールを定めようというのが、条例です。

条例はまずたたき台として条例案骨子が作られます。これについて地域の皆さんに意見を聞くパブリックコメント制度と言うものがあるのですが、ご存知でしょうか。

パブリックコメント(略してパブコメと呼ばれています)は募集期間はあまり長くない場合もあり、2週間から1ヶ月程度です。

どれくらいの人が応募するのか気になる方もいると思いますので、この記事では平成29年10月に行われた新宿区のパブコメの結果と新宿区ルールをご紹介したいと思います。

目次

新宿区のパブリックコメント結果

実施期間

【平成29年10月5日から10月18日】

実施期間は非常に短く、2週間です。

パブコメという制度を元々知っていて、民泊について高い関心を持っている人は気づけるかもしれないですが、元々そうでない人は、パブコメを実施しているのも知らないし、この制度の趣旨もよくわからないと思います。

意見を求めるのですから意見がある人だけに参加してもらえばいいというスタンスかもしれませんが、それでは区民から広く意見を求めたと言えるでしょうか、ちょっと疑問です。

しかし、期間を伸ばせば伸ばしただけ良い意見が集まるのかというと、そういうわけでもないかもしれません。元々言いたい意見がある人は期間の長さに関係なく、始まったらスグに応募するでしょう。

また、期間を伸ばせばそれだけ条例が決まるのが遅くなります。そこを短縮するという意図もあるでしょう。

 

実施結果

【意見提出者29名】

【意見件数89件】

これも期間と比例関係にあると思われますので少ないと思います。

案件にもよると思いますが、人口34万人の新宿区で29名は割合としたら相当少ないでしょう。

民泊はもっと注目されているのかと思いましたが、ここには反映されていないようです。

しかし、逆に考えれば少数しか発言しなければ自分の意見が他の意見に埋もれること無く行政に届くので、もしかしたら選挙よりも余程効果のある政治への参加方法ではないでしょうか。

 

意見の反映

A 意見を反映する 0件
B 意見趣旨は区の方向性と同じ 19件
C 今後の参考とする 27件
D 意見として伺う 38件
E 質問に回答する 5件

新宿区のパブコメでは集まった意見に対してどう反映したのかの結果が書いてありました。上記の表のとおりです。

Aの「意見を反映する」は0件ですので意見を出したからと言って行政がすぐに「はい、ではそうします。」というわけではないようです。

以下、B→C→Dといくほど行政の考え方から離れていくのですが、件数も上がっていっています。ということは今回は行政の目指す方向と区民からの意見が違う方向を向いているほうが多かった。ということが言えると思います。

 

新宿区ルールの

それではこのパブコメを踏まえて新宿区としてはどういう方向を目指そうとしているのでしょうか。

民泊新法における新宿区のルールの主な部分を見てみましょう。

簡単に表にまとめてみました。ざっと見てみてください。

タイトル 概要
1,目的  区民の生活環境の悪化を防止
2,定義 この条例の住宅宿泊事業者とは新宿区内にある住宅にかかるものである
 

3,区の責務

住宅宿泊事業の適正な運営の策定と実施

警察、消防などの関係機関の連携

 

4,区民の責務

区民は区に協力するように努める
5,住宅宿泊事業者と管理業者の責務 生活環境の悪化を防止しなければならない
6,宿泊者の責務 生活環境の悪化を防止しなければならない
7,近隣住民への周知 事業者は届出の7日前までに近隣住民に対して、これから民泊を始めること、連絡先などを周知して、区に報告しなければならない。
7,届出住宅の縦覧 区は民泊事業をやっていることを公表する
8,廃棄物の適正処理 事業者はゴミを自ら適正に処理しなければならない。
9,苦情の対応記録 事業者、管理者は苦情の対応についての記録を3年間保存しなければならない。
10,実施の制限 住居専用地域では、月曜から木曜までは営業できない。
11,土地または住宅提供者の責務 他人に土地や住宅を貸している人は民泊をしてもいいかどうかを契約の際に明記するようにしなければならない。
建物の区分所有者は管理規約に民泊をしてもいいかどうか明記しなければならない。
12,届出住宅の公表 区長は届出住宅の所在地や連絡先などの事項を公表しなければならない。
13,建物または土地の提供者の責務 区内にある建物または土地を提供するものは、契約のときにその建物や土地に建築する建物で民泊をしていいかどうかを契約書の中に記載するようにしなければならない。

マンションは規約に定めるように努めなければならない。

 

生活環境の悪化をどうしても防ぎたい

「生活環境の悪化を防止する」という言葉が何度も出てきます。

このことからもわかるように、新宿区は民泊に対してやや後ろ向きな考えを持っていると言えます。

1,のこのルールを作る目的が「生活環境悪化の防止」ということはどういうことかというと、このルールを作らないとそのままでは生活環境が悪化してしまう恐れがある、と考えているということです。

また、5,事業者の責務と6,宿泊者の責務は以前は、「防止をするよう務めなければならない」という努力義務であったのが、パブコメ実施後、「防止しなければならない」という義務に変わりました。

パブコメを経て変わったのはこの部分だけです。区民の意見も民泊に対してやや厳しく見ていて、トラブルが起こるのを懸念しています。実際にいままでトラブルが起きて困った経験のある人たちの生の声がパブコメを通じて通ったということになります。

 

住居専用地域の営業制限

この骨子の中でもう一点重要なところは

10の実施の制限です。

住居専用地域では金・土・日曜日しか営業することができません。

もともと民泊新法は、住宅で宿泊事業を営業できるようにする法律です。旅館業の許可がとれない住居専用地域で民泊を始めたいという人は期待していたはずです。

それが週の半分以上を制限されるのでは、残念ながらビジネスとしては更に成り立ちにくいでしょう。1年を52週間として、年間156日しか営業できないからです。法律の上限の180日よりも24日少ないということになります。

 

まとめ

新宿区の条例骨子がパブリックコメント結果を踏まえて打ち出されました。これを元に条例が作成されました。

新宿区は東京都23区の中でも、現在ダントツで民泊施設が多いと言われています。そして現在の民泊施設のほとんど(9割方)は無許可の民泊と言われていますので、トラブルで困っている人も多いのでしょう。

その結果がパブリックコメントにでています。

民泊新法に対する各地の条例は厳しい方向にしか行かないものです。新宿区は民泊に反対とは言わないですが、非常に慎重な姿勢を示したと言えます。

まだまだこれから各地方での条例が出てくる先駆けとなる区ですから、影響力も強いと思います。

もし今あなたが、将来民泊の運営をしたいとお考えでしたら新宿区での新規開業は避けたほうが無難かもしれません。

まだ新法施行までに時間があり、各自治体の方向性も出揃っていませんので、もう少し様子を見て、情報を集めてからでも遅くはないと思います。

 

この記事は、新宿区のページを参考にしました。

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この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

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