設置場所基準|宿泊施設と教育施設との距離は110メートル

近くに学校があったら宿泊施設は開設できない、という話を聞いたことがありませんか?

この情報はちょっと正確ではありません。

近くに学校があっても宿泊施設は設置できます。学校が近くにあるからといって必要以上に不許可の心配をすることはありません。

この記事では学校などの要保護施設との距離制限についてくわしく解説していきます。

目次

法律で定められていること

この距離制限のことは旅館業法3条3項に書いてあります。

許可の申請に係る施設の設置場所が、次に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。以下同じ。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合において、その設置によつて当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるときも、前項と同様とする。(=都道府県知事は許可を与えない事ができる)

旅館業法3条3項

これだけだとちょっと分かりにくいですが、ポイントとなるのは次の3点です。

  1. 次に掲げる施設
  2. おおむね百メートルの区域内
  3. 清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるとき

この3点すべてが当てはまるとき、都道府県知事は許可を与えないことができると書かれています。

ですので、100メートル以内にあってもそれほど影響がない場合にはこの条文の効力はなく、このことだけで不許可とされる事はありません。

では、許可が与えられないのは具体的にはどういうときなのか、3つのポイントの意味を詳しくみていきます。

保護される施設とは

この規定で保護しようとする清純な環境であるべき施設とは次の通りです。

  • 学校教育法に規定する学校(大学を除く)
  • 児童福祉法に規定する児童福祉施設
  • 社会教育法に規定する施設で、条例で定めるもの

具体的には下の表のような施設です。学校関係では大学が除外されているところがポイントです。

学校教育法上の施設

幼稚園小学校中学校
高校中等教育学校特別支援学校
高等専門学校

児童福祉法上の施設

助産施設乳児院母子生活支援施設
保育所幼児連携型認定こども園児童厚生施設
児童養護施設障害児入所施設児童発達支援センター
情緒障害児短期治療施設児童自立支援施設児童家庭支援センター

各自治体で定める施設の例

図書館博物館公民館
公園スポーツ施設 など

おおむね百メートルの範囲

「おおむね」というのは曖昧な日本語ですが、ここでは「10%増し」という意味でとらえるようです。つまり、おおむね百メートルは110メートルということです。

どこからどこまでの距離かというと、宿泊施設の壁から学校などの施設の壁までの距離です。

実際には直線距離を図るのは難しいですから、地図を開いて宿泊施設を中心に半径110メートルの円の中に学校などがあるかどうかを確認しましょう。また、最初に保健所に相談したときに聞いてみましょう。

清純な施設環境が著しく害されるおそれとは

「著しく害される」というのもまた、どれぐらいが著しいのか判断がしにくい言葉ですが、これは各自治体の条例などで決められています。

例えば大阪市では、ラブホテルのような施設が学校周辺に建てられることにより、次のような事態が発生すると想定しています。

  • 不審者による声掛け
  • 性被害の誘発
  • 交通量の変化による事故などの発生
  • 案内所などの他の風俗関係業種が集まってくる

もちろんラブホテルそのものが悪い施設というわけではありません。
しかし、小学校や保育園などの周辺では子どもたちへの直接的な危険も考えられますから、「清純な環境が著しく害されるおそれ」があるといえます。

関係機関に意見を求められる

始めようとする宿泊施設の110メートル周囲に上記の施設がある場合に、都道府県知事から学校の校長・教育委員会などに物件の詳細について情報が送られ、意見が求められます。このことを「意見の照会」と言います。

意見というのは上で説明した、清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについてどうですか?ということです。

意見の照会が発生した場合、その分通常の手続よりも時間がかかることを覚えておきましょう。

条件が付けられる場合がある

意見の照会が行われても、基本的には学校側などからの返事で「絶対不許可にしなさい!」などというようなネガティブな意見は無いようです。

しかし、条件が付けられる場合があります。

「あまり派手な色などは抑えて欲しい」「窓に目隠しをして欲しい」と言うような要望が出るようです。この場合は素直に従いましょう。

まとめ

学校関連施設が周囲にあったとしても、それだけで旅館業の申請が即不許可になるというわけではありません。
よほどの理由がない限り、学校や施設側が不許可を求めることはないからです。

しかしそれで、許可さえ取れればコッチのモノ!みたいな運営を始めるのはダメです。

学校は反対しなかったとしても、そこに通う子どもたちの保護者や近隣住民は見ています。常に配慮するようにしましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

目次