あなたはこれから民泊新法の「住宅宿泊管理業者」になるために届出をしようと考えている人でしょうか。
もしくはこれまで代行業者としてやってきたけれども、この先どうしようかと迷っている人かもしれません。
お待ちしておりました。あなたのために私はこのページを用意しておきました。
今まで、民泊代行業者の皆さんは特に何の制約なしにやってこられました。それはなぜかというと、民泊という宿泊施設は時代によって新しく生まれたものですから、これを規制する法律がなかったからです。
これまで民泊の様々な需要に対応するために、アイディアと工夫によってサービスが生み出されてきました。初めからきつい縛りがあったらここまで大きなビジネスにはなってなかったのでは、と思います。
しかし民泊新法の制定によって、住宅宿泊管理業の登録をするか、登録済みの住宅宿泊管理業者(以下、管理業者とよびます)からの再委託を受けるかの、どちらかをしなければならなくなりました。
登録制になったということは、そのために幾つかの要件を満たさなければならなくなったということです。
政府はヤミ民泊の横行を重く見て、登録のハードルを上げることで、管理業者に重要なポジションを任せることにしたのです。
この記事では、あなたが管理業者となる選択の際に、また実際に管理業者として運営していく上で身につけていただきたい知識や情報を解説していきます。
より詳しい記事がある項目についてはリンクを張っていますので、そちらも是非ご覧になって下さい。
このページを読んでいただければ住宅宿泊管理業の登録に必要な知識が得られることをお約束します。
是非参考にして下さい。
民泊新法での住宅宿泊管理業とは
まず最初に教科書的で申し訳ありませんが、住宅宿泊管理業とは一体どういうものかをご理解いただきたいです。
住宅宿泊管理業の法律の定義としては「住宅宿泊事業者から委託を受けて報酬を得て住宅宿泊管理業務を行う事業」となっています。
住宅宿泊管理業には該当しない場合
「報酬を得て」という部分があります。これを反対に解釈すると、報酬をもらわなければ住宅宿泊管理業にはならないということになります。ただし、金銭以外でも見返りとしての対価を得ればそれは報酬とされますので注意が必要です。
実際には報酬を得ないというとボランティアとかお手伝いという形になって、ビジネスとしては成り立たなくなってしまいますので、通常は報酬をもらうはずです。
また、冒頭でも述べましたが、委託を受けた管理業者から再委託をうけて「清掃の部分だけ」とか、「メール連絡業務だけ」を行う場合には住宅宿泊管理業には該当しません。ですので下で説明する資格の要件が満たせない場合は再委託を受けて代行業として民泊ビジネスに参入できます。
住宅宿泊管理業者の立ち位置
ところで、民泊新法の全体像を知るにはこの関係図がとてもわかりやすいのでちょっと見て下さい。
国土交通省のホームページより(一部加工)
図の赤枠で囲んであるのが管理業者が関係する範囲です。
簡単にまとめると、
●国土交通大臣に登録することで民泊制度の枠の中にはいり、行政の監督下に置かれます。これが今回の民泊新法で新しくなった部分です。
●仕事としては住宅宿泊事業者(以下、オーナーと呼びます)から住宅の管理を委託されます。この部分はこれまでも同じでしたが、委託に対してきっちり条件を盛り込んだ契約を交わすという事がルール化されました。
●オーナー側からみても、大臣の登録を受けていない業者には委託することができなくなりました。
都道府県知事、観光庁長官、国土交通大臣の間で情報が共有されているので、もし今まで親しくしていた業者と引き続き不正な手段で手続きしようとしても、すぐにバレてしまいます。
では、大臣の登録を受けるにはどんな要件があるのでしょうか。
登録要件
登録の要件は大きく2つに分けて考えられます。
1.拒否事由にあたらないこと
拒否事由というのは法律の条文上の言葉です。この事由に該当する人が申請してきたら国土交通大臣はその登録を拒否しなければならないとされています。
言い換えると、登録するためには次の事項に該当しないことが求められます。
- 成年後見人または被保佐人
- 破産者
- 登録取り消し後、5年を経過しない者
- 刑罰等の執行後、5年を経過しない者
- 暴力団員等
- 住宅宿泊管理業に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
- 未成年者で法定代理人が1~6のいずれかに該当するもの
- 法人で、役員のうち1~6のいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配するもの
- 財産的基礎を有しない者
登録要件についてはコチラでも詳しく解説しています。
⇒これに当てはまると申請できません|住宅宿泊管理業者の登録要件
2.資格・人員体制
もう一つが資格要件になります。
グループとしては上の拒否事由の11番に入る部分ですが、分けて考えたほうがわかりやすいと思います。
管理業者となるには住宅についての知識が必要です。
事業者の免許で証明する場合には次の免許があることが必要です。
- 宅地建物取引業
- マンション管理業
- 賃貸住宅管理業
上に該当しない場合は次の資格を持った人を雇用していることが求められます。
- 住宅管理や取引の実務経験が2年以上ある人
- 宅地建物取引士
- 賃貸不動産経営管理士
- 管理業務主任者
一般的にいえばパートやアルバイトも雇用に含まれますが、この場合は正社員として雇用契約していなければ認めてもらえません。通常アルバイトの方に住宅の取引や契約のことを任せるのは考えにくいからです。
また、資格者が居るだけではなく、きちんと業務ができる体制が整っていなければなりません。
⇒宅建とかの資格ないけど、民泊代行業者を続けられる?はい、大丈夫です。
登録の申請
登録に必要な要件を満たしていることがわかったら早速申請に進みましょう。
費用
登録するのに役所に払う費用は登録免許税の90,000円です。更新期間が設定されており、5年の更新ごとに19,700円の手数料がかかります。
登録にかかる日数
申請してから90日が標準処理期間とされています。登録までに役所の内部で90日かかるということです。
ずいぶん長い感じがしますが、あくまで標準処理期間ですので、これよりも短くなる場合も考えられます。また、地域によって違いがあります。
そろえる書類
申請に必要な書類は実は結構あります。
中身を見てみるとおおまかに2つに分類されます。国土交通省が決めた様式の「登録申請書」と、それに書いた事実を裏付けて証明する「添付書類」です。
個人事業で登録する場合と、法人で登録する場合で必要書類が少し変わってきます。法人は個人の書類に加えて役員全員分を出す事になるなど、量も多めです。
申請書
申請書には次の事項を記入していきます。用紙は6枚に渡ります。
- 登録申請者
- 商号、名称、住所など
- 代表者
- 法定代理人(未成年の場合)
- 法人の役員(法人の場合)
- 営業所・事務所
- すでに持っている資格・登録
- 登録免許税納付書
⇒あなたもできる!住宅宿泊管理業者の登録申請書類の書き方
添付書類
また、添付書類は次のものを用意します。
個人の場合
- 所得税の納税証明書
- 登記されていないことの証明書
- 身分証明書
- 略歴書
- 法定代理人が法人の場合の登記事項証明書(未成年)
- 財産に関する調書
- 宅地建物取引士などの資格の証明書、または2年以上の実務を記載した職務経歴書
- 苦情対応の人員体制図
- 使用する機器の詳細(ICTを使う場合)
- 再委託先の人員体制
- 誓約書
法人の場合
上記に加えて
- 定款のコピー
- 登記事項証明書
- 法人税納税証明書
- 役員全員分の登記されていないことの証明書
- 役員全員分の身分証明書
- 役員・相談役・顧問の略歴書
- 出資金に関する書類
- 決算書一式
⇒あなたもできる!住宅宿泊管理業者の登録|添付書類の書き方・集め方
管理受託契約を交わす
民泊についての管理の委託契約をオーナーと交わすのですが、民泊新法のオーナーが運営する民泊施設には2種類あります。
オーナーが住んでいる住宅に宿泊客を招き入れる「家主同居型」とオーナーは別に住んでいて空き室や空き家に宿泊客を泊める「家主不在型」の2種類です。
このうち、上の図にもある通り、主に家主不在型の民泊オーナーから住宅の管理業務の委託を受けることになります。
日本では家主不在型が7割以上を占めると言われていますので、委託の需要はあるはずです。
⇒住宅宿泊管理業者|オーナーとの管理受託契約の中身をわかりやすく解説
余談ですが、横行してしまったヤミ民泊には家主が不在ばかりか、本人確認や鍵やゴミなどの管理もいい加減でした。このことが色々な事件を引き起こしたのです。
実際にこういったネガティブな部分ばかりが報道されて「民泊は怪しい、危ない、迷惑」という印象が広まってしまいましたが、適正に管理されていれば怪しいことなどないのです。
元々は空き家問題や宿泊施設不足を解決する救世主として民泊は議論されたのですから。
政府はこの度の民泊新法でヤミ民泊撲滅に乗り出しました。
その役割の重要な部分を担うのがここで説明している住宅宿泊管理業をおこなう皆さんです。
業務内容
契約を交わしたらあとは誠実に業務を行いましょう。
委託の需要はあるといいましたが、管理業者の数もおそらくかなり増えるのではないかと思います。また、不動産業界、旅行業界の大手企業も参入してきていますので、地域によっては競争は激しいものになることが予想されます。
これは私の個人的な考えですが、競争に勝っていくには価格の安さも必要ですが、管理業者ですから安心安全快適を間違いなく提供できるということが大事ではないかと思います。泊まりに来るゲスト、部屋を提供しているオーナー、近隣の住民の皆さんに信頼される管理業者になっていただきたいです。
このページを見てくださるあなたにはぜひ大成功してほしいと思っています。
それでは業務の内容を見てみましょう。
やや多いので一覧表にしました。
ゲストへの鍵の受け渡し | 本人確認、宿泊者名簿の作成、管理 | 未チェックインの報告 |
騒音防止などについての説明 | 周辺住民からの苦情や問い合わせへの対応 | ゲストによる住宅への破壊などに対する措置 |
長期滞在者への対応 | ゲストからの鍵の返却確認 | チェックアウト後の状況確認 |
日常清掃業務 | ベッドのシーツ、カバーなどの洗濯 | 備品の管理補充 |
住宅・設備の維持管理 | 非常用照明の設置、災害発生時の避難に関する案内 | 災害時の通報連絡先の案内 |
ゲストからの苦情の対応 | 官公庁への届出事務の代行 | 標識の掲示 |
オーナーへの定期報告 | 帳簿の備え付け・保存 |
これは国土交通省が出している標準契約に規定する業務の主な内容一覧です。
住宅宿泊管理業者の業務|仕事は大きく3つに分類されています。
実際の管理代行業の現場ではさまざまな業者が参入してアイデアが出され、もっと便利で快適で効率的なサービスが次々に登場しています。
禁止事項
管理業を適正に行うために、禁止されている事項もあります。
名義貸し
自分の名義を他人に使わせて住宅宿泊管理業を営ませてはいけません。
誇大な広告の禁止
業務に関して広告をするときは、著しく事実と違うような表示、または実際のものよりも著しく優良で、有利であると人を誤認させるような表示をしてはいけません。
騙すつもりはないけれども、内容を疑われるような大袈裟な広告はしてはダメです。もちろん嘘もダメです。
例えば
◆実際の契約上は管理業者がゲストによって生じた損害について一切責任を追わないこととなっているのに、ホストに損害の負担が全く無いかのように書かれている。
◆宿泊数に比例する料金体系が設定されているにも関わらず、月額制で上限金額が決まった定額制である家のように書かれている。
◆契約期間中の解約は制限されるにも関わらず、いつでも解約できるかのように書かれている。
こういう内容のものは認められません。
不当な勧誘等の禁止について
オーナーに対して住宅の管理委託をもらえるように営業するのはいいのですが、不当な方法で勧誘してはいけません。
例えば
◆相手が迷惑に感じる時間に電話や訪問をする。迷惑な時間は相手の職業や生活習慣によって個別に判断するものですが、一般的には午後9時から午前8時の間は承諾を得てからにしましょう。
◆相手が契約しない、または、契約の更新をしないという意思を表示しているにも関わらずしつこく勧誘するのはやめましょう。
◆住宅の所在地が営業の範囲から著しく遠いなどで管理業務が適切に実施できないことをわかっていながら勧誘して契約を結んだりするのはやめましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
住宅宿泊管理業の登録をするにあたって、必要な情報をまとめてきました。
ここまで読んだあなたは、法律や決まりごとに対して必要な知識はほぼ入れていただけたのではないかと思います。知識を活かしてご自分で登録申請することができると思います。面倒だと思えば専門家に頼むことも選択肢の一つでしょう。
そして繰り返しになりますが、民泊はしっかりとした管理体制があれば、危ないものでも怪しいものでもないのです。
民泊を通して素晴らしい体験をしたという人は、世界に沢山います。
一部の悪質な人たちのために民泊全体がイメージダウンしていくのはもうやめにしたい。そのためには高い意識を持った管理業者さんのはたらきが必須です。
これを読んで参考にしてくださった管理業者の皆さんの事業の成功をお祈りしています。