住宅宿泊管理業者の業務|仕事は大きく3つに分類されています。

コロナが終息し、インバウンドが戻ってきた今、民泊事業がまた見直されています。

この制度がうまく回っていくために非常に大きな役割を担っているのが住宅宿泊管理業者です。

2018年、民泊新法施行以前は民泊代行業者としてさまざまな業務が開拓されましたが、特にルールはありませんでした。今考えれば自由だったといえますが、自由すぎて違法なヤミ民泊が広がってしまったのは皆さんご存知だと思います。

急ピッチで法整備が行われ、法令やガイドラインも大きなスペースを割いて住宅宿泊管理業者についてのルールを定めています。

これはヤミ民泊を撃退するためという目的もありますし、もちろん宿泊者の安心安全な民泊体験を守るためのものでもあります。

この記事では住宅宿泊管理業者って具体的にはどういう決まりがあってどんな仕事をするのか、解説していきたいと思います。

目次

仕事は大きく3つに分類されています。

管理業者が住宅宿泊事業者(民泊オーナー)と受託契約を結ぶときの標準契約書があるのですが、その中で、管理業者の業務は大きく3つに分類されています。

  1. 宿泊者等への対応に関する業務
  2. 清掃・衛生業務
  3. 住宅設備管理及び安全確保業務

こう書くとすごくカタイ感じがして、なんのことだか実感がわかなくて嫌になってしまいますが、大丈夫です。

中身を見てみると当たり前のことが多いですし、なるべくわかり易い言葉で解説していきたいと思います。

1,宿泊者等への対応に関する業務

まずひとつ目は、泊まりに来たゲストへの対応についてまとめています。宿泊事業はお客さん商売ですから、ここが一番重要な仕事です。

ゲストへの対応が悪ければ、管理業者のお客さんであるオーナーからも契約を打ち切られてしまいますよね。

この中でも9つの業務があります。

ゲストへの鍵の受け渡し

ゲストが本当に予約者であることを確認した上で、鍵の受け渡しを行う仕事です。

郵便ポストに鍵を入れておいて、そのポストを開ける南京錠のナンバーを教えるという方法で受け渡しをする方法がありましたが、コレを管理業者がやったらあまりにものんき過ぎます。大事なお客さんの住宅の鍵ですから、もっとキッチリ管理する方法でお願いします。

今はICTを利用してクラウドで管理するスマートロックなどの最新技術がありますよね。

本人確認、宿泊者名簿の作成・管理

これは仕組みを作れば鍵の受け渡しとセットで一気にできそうな業務です。

本人確認はとても大事です。あとで事件や感染症が広がってしまったときなどに警察や保健所が照会するためにも使います。

外国人旅行者にはパスポートの提示を求めてコピーを3年間保存します。

宿泊者名簿についてはこちらにも記事を用意しています。
宿泊者名簿の記入は義務です。しっかり記入いたしましょう。

未チェックインの報告

予定していたゲストがチェックインされないときにはオーナーに報告をします。

騒音防止などについての説明

ゲストに対して騒音やゴミ出しや火事やご近所への悪影響についての説明をします。

外国人は日本人とはなにかと習慣が違います。ゴミ出しのルールなんてわからなくて当然ですし、隣近所はみんなトモダチ感覚という場合もあるかもしれません。

また、外国人でなくても誰でも数人での旅行中は気持ちが開放的になってついつい騒がしくなってしまうものです。これは皆そうでしょう。

だからと言ってやりたい放題というわけには行きませんので一般的なルールを書いて壁に貼ったり、冊子にするなどして説明しましょう。

周辺住民からの苦情や問い合わせへの対応

説明したのにもかかわらず、やはりトラブルは起きてしまうものです。

周辺の住民から嫌われてはその住宅では今後民泊が続けづらくなってしまいますから、苦情の対応についてはすぐに対応します。

現地の住宅には標識が掲示されていますが、そこに管理業者の連絡先が明示されることとなっていますので、管理業者に直接連絡が来ることが予想されます。

管理業者に連絡があって現地に赴く必要がある場合は30分以内を目安とするとされています。また、24時間対応可能であることが求められています。

また、観光庁が「民泊制度コールセンター」を設置しますので、そちらを経由しての対応依頼にも備えましょう。

ゲストによる住宅への破壊などに対する措置

住宅の一部を壊したり傷つけたりするような法に違反するような行為を把握したら、やめさせるようにします。

そんな行為をしているのを知ったら見て見ぬふりはしてはダメですよね。

長期滞在者への対応

連泊する長期滞在者には定期的に面会をします。

7日以上の宿泊契約の場合には本当にちゃんと宿泊しているかや、所在不明になっていないかを確認します。

何かの事件に巻き込まれて、泊まってるはずが既にそこにはいなかった!ということにならないための規定です。

ゲストからの鍵の返却確認

貸した鍵は出発時には返してもらいます。犯罪につながるといけませんので、しっかりと確認をします。

チェックアウト後の状況確認

ゲストがチェックアウトしたあとの部屋の様子を確認します。

忘れ物がないか、壁や設備が壊れていないかなどをチェックして、宿泊前の状態と大きく変わらないように部屋を維持していきます。

清掃・衛生業務

貸し出す部屋をきれいに保つ事で、ゲストに快適に過ごしてもらうようにします。

たとえ、築年数が経っていて古い住宅で清潔にしてあれば喜んでくれるでしょう。

清掃・衛生関係には3つの業務があります。

日常清掃業務

住宅の設備や備品の定期的な清掃・換気をします。

ゲストが感染症の疑いがあるときは、保健所に通報することも必要です。被害を最小限におさえるように消毒、廃棄などの処置もします。

住宅ででたゴミは事業系廃棄物です。一見、普通のゴミでも宿泊事業として使った部屋からでたので事業系ということになります。きちんと適正に処理しましょう。廃棄物処理法違反となってしまいますと、重い罰が課されます。

ベッドのシーツ、カバーなどの洗濯

直接人に接触するものはゲストが入れ替わるごとに洗濯したものと取り替えて下さい。枕カバー、タオル類もそうですね。

以前のヤミ民泊全盛のときはベッドに誰かの髪の毛が付いていた、ということもよく聞かれました。わざわざルール化するようなことでもない気がしますが、絶対必要な業務です。

備品の管理補充

トイレットペーパー、ティッシュ、シャンプー・リンス・ボディーソープ、洗濯洗剤などの在庫残量を確認して、なくなってしまう前に補充しておきます。

住宅・設備管理及び安全確保業務

民泊に泊まりに来たゲストにとっては、そこは初めての場所ということがほとんどです。

ずっと住んでいる人にも増して、災害などの非常時にどうしたら良いかわからないでしょう。

そんな時のために、この住宅・設備管理および安全確保業務にはいつもチェックしておくべきことが分類されています。

住宅・設備の維持管理

台所、浴室、トイレ、洗面設備、水道や電気などのライフラインがいつも正常に機能するようにきちんとメンテナンスをします。

空室時の施錠の確認、鍵の管理を行います。

外国語での設備の使い方、最寄り駅までの経路の案内物を置いておきましょう。

非常用照明の設置、点検、避難経路の表示、災害発生時の避難に関する案内

非常用照明を宿泊室と避難経路に設置して、定期的に点検をします。

また、災害時に避難する経路を表示します。

災害時の通報連絡先の案内

消防署、警察署、医療機関、管理業者(あなた)への連絡方法を備え付けます。

例えば火事のとき、避難しただけではダメですよね。消防車を呼ぶことができれば被害を抑えられるはずです。

ゲストからの苦情の対応

先程は近隣住民からの対応でしたが、今度はゲストです。

建物や設備などの不具合について苦情があった場合には、状況を確認して対応します。

官公庁への届出事務の代行

電力、ガス、水道、役所への諸届の必要があれば、代行します。

その他業務

3つに分類された業務を紹介しましたが、その中に入っていないものもありますので、その他としました。

標識の掲示

住宅宿泊管理業者は、登録した営業所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げます。

住  宅  宿  泊  管  理  業  者  登  録  票
登   録   番   号国土交通大臣(  )第     号
登  録  年  月  日       年       月
登  録  の  有  効  期  間   年   月   日 から   年   月   日 まで
商 号 、名 称 ま た は 氏 名
主 た る 営 業 所 ま た は 事 務 所 の 所 在 地                  電話番号  (  )

オーナーへの定期報告

管理業者は住宅宿泊事業の事業年度終了後および受託契約期間満了後に住宅宿泊管理業務報告書を作成し、オーナーに渡して説明する必要があります。

◆報告書の内容

  • 報告の対象期間
  • 管理業務の実施状況
  • 住宅の維持保全の状況
  • 周辺住民からの苦情の発生状況

なお、報告書はメールなどでの提出も認められています。

2ヶ月ごとの行政への定期報告はオーナーが行う仕事です。管理業者の業務ではありませんのでご注意ください。

帳簿の備え付け・保存

住宅宿泊管理業者は営業所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、必要事項を記載して、年度ごとに管理します。

各事業年度の閉鎖後5年間は保存しなければななりません。

◆帳簿に記載する内容

  • 管理受託契約を締結した年月日
  • 契約を締結した住宅宿泊事業者の名称
  • 契約の対象となる住宅
  • 受託した管理業務の内容
  • 報酬額
  • その他参考となる事項

まとめ

住宅宿泊管理業者の業務をみてきました。

内容的には、ホテルや旅館に泊まりに行けばやっているであろう、と予想がつくことです。安全、安心、衛生的ということが多かったと思います。

これらの業務をする上で、お客さんであるオーナーに対しては「もっと利益が出るように」、ゲストに対しては「もっと快適に過ごせるように」という工夫が上乗せできれば他の業者と差別化できていくのではないかと思います。

ICTをつかってドンドン快適・便利・合理的なしくみが出てくるのではないかと期待されています。

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この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

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