民泊と法律|消防法でややこしく定められた消防用設備について

民泊を始めるには旅館業法による簡易宿所営業の許可が必要になります。この許可をとるためには建築基準法、消防法など様々な法律で定められている条件をクリアしなければなりません。

この記事では消防法に規定されている消防用設備について解説していきます。

建物の大きさにより、取扱いが違うのでかなりややこしいです。そのため消防庁が出している図解を載せています。

 

目次

民泊もホテルも旅館も基本は同じ

旅館営業、ホテル営業、民泊(簡易宿所営業)も特区民泊もその許可の種類で差はありません。消防法上では民泊も旅館やホテルと同じことになります。

規制緩和が注目されている民泊ですが、消防法については緩和はありません。火事が起きてしまったら命にかかわることですから、そこを緩めるわけにはいかないということでしょう。

 

戸建住宅

建物の大きさによって便宜的に小・中・大として分類してみていきます。

(小)【一般住宅】として取り扱われる場合
(民泊部分が建物全体の半分未満で50㎡以下)

(下の図1参照)

戸建住宅では民泊部分が小さければ新たな規制はかかりません。

この場合は民泊施設ではなく、一般住宅として扱われるということです。

*すべての住宅に設置義務がある住宅用火災警報器は設置が必要です。これは民泊をはじめるかどうかには関係なく、もともと設置されているべきものです。

 

(中)【用途が混在する防火対象物】として取り扱われる場合
(民泊部分が建物の半分未満で50㎡を超える)

(下の図2参照)

消火器

民泊部分の床面積が150㎡以上の場合に必要です。

自動火災報知設備

民泊部分のみ必要です。(無線方式のもので対応可能)

誘導灯

民泊を行うすべての施設で必要です。

 

(大)【宿泊施設】として取り扱われる場合
民泊部分が建物全体の半分よりも大きい

(下の図3参照)

上記の(中)の場合には民泊部分のみでよかった自動火災報知設備が建物全体で必要になります。

消火器

民泊部分の床面積が150㎡以上の場合に必要です。

自動火災報知設備

建物全体に必要です。(無線方式のもので対応可能)

誘導灯

民泊を行うすべての施設で必要です。

 

↓クリックで大きくなります

出典:民泊サービスのあり方に関する検討会資料

共同住宅

マンションのような共同住宅では、あなたの所有している(または賃貸している)部屋の一部(例えば4LDKのうちのLDKの部分)だけを貸すというようなことは認められていませんので、部屋すべてが民泊施設と判断されることになります。

消火器

民泊に関係なくもともと設置

誘導灯

すべての施設で必要です。新たに廊下や階段などの共有部分に設置します。

自動火災報知機

消防法上ではホテル・旅館として扱われる民泊の施設では、すべての場合で自動火災報知機の設置が必要となっています。

建物の床面積に応じて設置の基準が定められています。共同住宅で問題になるのはこの自動火災報知機の設置です。大中小の場合に分けてみていきます。

 

(大)床面積500㎡以上

この大きさの建物であれば、最初から自動火災報知機が設置されているはずです。

民泊を一部屋で始めるとなった段階で新たに自動火災報知機を設置しなければならなくなる、ということはありません。

 

(小)床面積300㎡未満

特定小規模施設用自動火災報知機と呼ばれる簡易的なものの設置で足ります。

 

(中)床面積300㎡以上、500㎡未満

この大きさの建物が問題の部分です。上記(大)ほど大きくないので、最初から自動火災報知機は設置されておらず、また(小)ほど小さくないので、簡易的なものでは足りません。

さらに(中)を2つに分けます。

 

民泊部分が全体の床面積の1割を超えない

下図いちばん右に示すように、管理人室と民泊部分のみの設置で可とされています。

民泊部分が全体の床面積の1割を超える

この場合が一番ネックです。上記の(大)の場合と同様、建物全体に設置が必要になります。マンションであればすべての住人にお願いして設置をしてもらわなければならない事態となってしまいます。

ということは、1割を超えるか超えないかでかなり違う対応を取らなければなりません。
例えば、戸数にもよりますがマンション全体でまだ誰も民泊をやっていない状態なら当然1割以内だと思います。しかし、もしライバルが複数戸で同時期に開業を準備していて、こちらの開業が少し遅れた場合、1割を超えてしまう可能性もでてきます。そうすると早い者勝ちということになります。

この競争に負けた場合、現実的には開業はかなり厳しいと言わざるを得ません。まず設備にお金がかかりすぎます。

また、寂しいことを言って申し訳ありませんが、マンション住民からすれば、同じマンションに住んでいるというだけの関係の人の民泊運営のためにそこまで協力する義務がありません。

民泊運営をしたいのであれば、そのマンションは諦めて他の物件を探すことをおすすめします。

 

↓クリックで大きくなります出典:民泊サービスのあり方に関する検討会資料

 

 

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この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

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