民泊を始めるために、旅館業法による簡易宿所営業の許可をとりたい場合、多くの法令が関係してきます。
具体的には旅館業法、建築基準法、消防法、都市計画法です。これらの法律が要求する内容を全てクリアしないと、許可は下りないのです。こう言うとハードルは高く、むずかしいなぁと感じる方もいるかもしれません。
確かに、簡易宿所営業の許可を取って民泊を始めることは、特区民泊や、新法民泊とくらべると簡単ではないです。用意しなくてはならない書類も多いですが、ここでは一度簡単に考えてみようと思います。
簡易宿所営業の許可をとるための4つの条件
旅館業法にさだめられている簡易宿所営業の許可をとれば堂々と民泊ができます。
いろいろな分野の書類を用意しなければならないので難しく考えがちですが、簡単に考えてみると、次の4つの条件を満たせばいいのです。
- ホテル/旅館業が建てられる土地
- ホテル旅館業として適法な建物
- 簡易宿所営業としての設備
- 運営者について
中身の細かいところは自治体によって多少違う部分もありますが、この4つのことをクリアできれば必ず、100%許可がおります。
1.ホテル/旅館業が建てられる土地
ひとつめは土地に関する条件です。
日本の法律では、いくら自分の所有する土地に建物を建てるからと言って、何を建ててもいいわけでありません。
旅館業の許可をとるには、ホテルまたは旅館を建てられる土地である必要があるのですが、都市計画法という法律に用途地域というきまりがあって、土地の使い方を定めています。例えば工場地帯の真ん中に旅館は建てられません。
また、おおむね100メートルの周囲に学校などがあるときは少し注意が必要です。保健所から教育委員会や都道府県知事に「意見の照会」が行われますので、通常よりも許可に10日間ほど時間がかかります。
旅館業法3条3項では、許可の申請にかかる施設の設置場所が、幼稚園、保育園、学校(大学を除く)児童福祉施設などの周囲おおむね100メートルの区域内にある場合において、その設置によって当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認められるとき許可を与えないとされています。つまり、あなたの民泊施設が学校などに対して著しく悪影響を及ぼさないかどうか、教育長などに保健所が意見を聞くというものです。
よほど派手な外観などの場合は条件が付けられることがあるようです。その場合は付近の住民も心配しだしてトラブルのもとになりますから、素直に従いましょう。
2.ホテル旅館業として適法な建物
ふたつめは建物に関する条件です。
まず建築物として建築基準法に適合していることが求められます。敷地面積、建築面積、客室面積を建築確認通知書、建築物検査済証で確認しましょう。
3.簡易宿所営業としての設備
簡易宿所として営業するにはある基準の設備が必要とされます。
- 宿泊者名簿を備える
- 宿泊者数✕3.3㎡の延床面積
- 二段ベッドの上段と下段の間隔はおおむね1m以上
- 適当な換気、採光、照明、防湿、排水の設備
- 宿泊者に対して十分な入浴設備
- 適当な数のトイレ
その他、都道府県によって、条例で定めるものに違いがあります。
例としては、リネン保管設備、階段の手すりなどです。また、トイレの数や洗面台の大きさなどを細かく規定している自治体もあります。
消防上の設備
また、一般家庭とホテル・旅館では防火の基準が違います。設備を家庭用から事業用のものにする必要があります。
具体的には消火器、自動火災報知機、誘導灯といった、消防法上の設備も基準を満たさなければ消防署からのお墨付きが発行してもらえず、旅館業法の許可に支障があります。
4.運営者について
4つ目は人についてです。次の事項にあてはまる人は許可されません。
- 旅館業法または旅館業法に基づく処分に違反して刑に処せられてから3年を経過していないもの。
- 旅館業法の許可を取り消されてから3年を経過していないもの。
過去に旅館業法をやぶったり、そのことで許可を取り消された人は3年間は許可されないということです。
ヤミ民泊が摘発されていますので、これに該当する方は気をつけなければいけません。
まとめ
いかがでしょうか。
民泊を始めるための簡易宿所営業の許可をとるには、大きく分けると以上の4つの条件を満たせばよいのです。
もちろん突き詰めていくと細かい条件がありますが、まずはザックリとご理解いただけたでしょうか。
設備の部分などは条例によって各自治体によっても違いますし、まだいまは、旅館業法も民泊新法も法整備の真っ只中といえます。そのような理由から許可のすべての条件については誰も一概に言うことができない状況です。
あなたが民泊を始めたいと思っているのであれば、まずは大まかな知識を持って、保健所や専門家に相談するのが良いと思います。