ここ2~3年で民泊(みんぱく)という言葉がよく聞かれるようになりました。
これには色々な背景があるのですが、そのまえに・・・
民泊という言葉はインターネットやニュースで聞いたことがあるけれども、
それが何なのかよくわからない
もしくは
- 自分には全く関係がない
- 東京とかの大都市だけの話でしょ?
- 外国人のためのもの?
- トラブルをひきおこす違法行為なんじゃないの?
こんな風に漠然とイメージしている方はまだまだ多いと思います。
これから2020年の東京オリンピックに向かって、日本を訪れる海外のお客さんを増やそうという政府の方針のもと、民泊は今、大きな変革期にあります。
法律も新たに作られていきますし、その影響力は全国に広がるはずです。
そんなときに「取り残されたくない!」「今のうちに知っておきたい!」というあなたのために、ここでは民泊とはなんなのかについてザックリとわかりやすく解説していきます。
民泊とは
民泊とは、その字から連想できるとおり、民家に泊まることです。
個人のお宅を宿泊施設として貸し出す、または借りて泊まることの両方を指して民泊と言っています。
ちなみにこれは法律によって定義されている言葉ではなく、一般的に呼ばれるようになった言葉です。
かつて日本では
今のように交通機関や自動車が発達していなかった頃、長距離を旅するのは大変なことでした。
その頃の風習として、旅の人に食事を提供したり、一日泊めてあげたりというのはよく行われていたようです。
現代では見知らぬ人をなんの約束も契約もなしに、全くの善意だけで家に泊めるというのは、残念ながらちょっとリスクと捉えてしまう人も多いでしょう。
良からぬ事件が毎日起きている現代では、見知らぬ人と過ごすというのは事件を連想させ、怖いというイメージがあるのだと思います。何もあなただけではありません。
現代では
少し横道にそれましたが、そんな風にして生まれた民泊ですが、現代では少し解釈が変わっています。現代では民泊とは、
借り手としては
「インターネットで目的地周辺の宿泊用施設を探して予約して、有料で泊まること」
貸し手としては
「外国人を主とした観光客に個人宅や投資物件を貸し出すビジネスモデル」
ということになります。インターネットの技術を使って「見知らぬ人」の個人情報を登録してから施設を提供することで、前述した怖さをなくしています。
そればかりか、言葉が通じなくても外国の人々とのコミュニケーションを楽しむというところまで発達しています。いわゆるグローバルってことですね。
今なぜ民泊が注目されているのか
外国人観光客がふえた
ここのところ中国人観光客の来日爆買いツアーは落ち着いてきましたが、観光庁の調べによると、2016年の日本への外国人旅行者数は2404万人で、4年連続で過去最高を更新したという調査結果が出ています。
2015年のランキングでみてみると、日本は世界で15位だそうです。
訪日外国人旅行者数の推移
国土交通省「観光の動向」より抜粋
日本は島国ですから、海外から日本に来るには飛行機での空路か、船での水路の2通りしかありません。
元々日本に住んでいる私たちはあまり感じませんが、日本は鉄道や自動車などでの陸路で入国できるヨーロッパなどの国々と比べると入国しにくい国ということが言えます。
ヨーロッパ諸国との差を埋めるため、この経路の不利な分を加味したデータでは、世界で8位に相当する人気ということです。それほど今、日本は海外からのお客さんが増えているのです。
宿泊施設が必要
海外からのお客さんは日帰りということは普通は有り得ませんから、宿泊施設が必要になってきますよね。
このように急激に増えつつある観光客に対して、じゃあスグにホテルを建てて対応しようと思っても、それはナカナカ難しい話です。
大型のホテルを建設するには多額の費用と長い工事期間がかかってしまい、そうそう簡単にはいきませんよね。
空き家問題
総務省が5年毎に住宅・土地統計調査を行っているのですが、直近の平成25年の調査では日本の総住宅数は6063万戸で、そのうち空き家は820万戸です。
空き家率の推移
総住宅数(万戸) | 空き家数(万戸) | 空き家率(%) | |
---|---|---|---|
1993年 | 4588 | 448 | 9.8 |
1998年 | 5025 | 576 | 11.5 |
2003年 | 5389 | 659 | 12.2 |
2008年 | 5759 | 757 | 13.1 |
2013年 | 6063 | 820 | 13.5 |
総住宅数が増えていますが、空き家も増え、空き家率も年々増加の一途です。
空き家率は地方では高くなっていますが、単純な空き家の数で考えると人口の多い大都市のほうが断然多くなります。
東京、神奈川、愛知、大阪の4つの都市圏でなんと240万戸の空き家があり、日本の空き家全体の820万戸のうちの29%を占めています。そして、この都市圏の空き家にはマンションが多く含まれています。
老朽化したマンションが空き部屋を多く抱えてしまった場合などはそれを埋めることが難しく、だからといって、壊すことや建て替えはさらに難しいという独特の事情があるので、放っておけばドンドン増えていくことになるでしょう。
ここまでのまとめ
なぜ今民泊が注目されているのかをまとめると、こうなります。
ここまでの問題点は、
- 外国人観光客が増えているので、宿泊施設を増やさなくちゃいけない。
- でもホテルはスグには建てられない。
- 都市部を中心に空き家が増え続け、対策を急がなくちゃいけない。
- でもスグには空き家を埋められない、建て替えられない。
となっています。
政府は2020年の東京オリンピックまでに海外からの訪日外国人客を増やしていきたいので、このことを視野に入れた場合、どれも早めに解決する必要がある問題です。
そこで民泊に光を当てる者が現れました。
今ある空いている部屋に観光客を泊めることで、上記の1から4のすべての問題を解決することが出来る唯一の手段が民泊だと考えついたのです。
しかもビジネスとして成り立つというおまけ付きです。
仲介する業者の存在
民泊に光を当てた者といいましたが、もう少し前の2008年頃からインターネットを使って、泊まりたい【外国人観光客】と、泊まって欲しい【貸出用宿泊施設のオーナー】を仲介するというサービスをビジネスとする企業が出現しました。
このビジネスモデルの業界最大手がAirbnb(エアービーアンドビー)です。宿泊施設、民宿を貸し出す人向けのウェブサイトで、世界192カ国で80万以上もの宿を提供しています。
民泊と法律との関係
民泊の営業には許可が必要
民泊とはザックリ言えば、料金を頂いて民家にお客さんを宿泊させることです。ということは、民家という外見ではありますが、やっている内容自体は旅館やホテルと同じことであると言えます。
旅館やホテルは、「旅館業法」という法律で定められた規定に従い、許可をとって営業を行っていますから、民泊も事業として営業するのであればきちんと許可を取らなければならないということになります。
ヤミ民泊
しかしながら、元々は善意の気持ちで始まった民泊です。民泊を直接規制する法律はありませんでした。
すると、法律で禁止されていないことならやってもいい、という反対解釈がいわゆるグレーゾーンという部分を生みました。白でも黒でもないグレーゾーンには先行者利益という旨味があり、早く始めた人はとても儲かりました。
「民泊は儲かるらしい」と噂は広まるなか、グレーゾーンは既に黒だと明確に規定されていましたが、法律無視で民泊を始める人が多くいました。そして、どんどん利益主義に走り、ついには近隣住民に迷惑がかかるようなパーティー騒ぎに、ごみ問題などが出てきてしまうのです。
まさにブラックなイメージに染まってしまった無許可の民泊をヤミ民泊といいます。
法律は守るためにある
政府は法改正を急いでいます。今後も違法のヤミ民泊を摘発する動きは活発になるでしょう。
トラブル多発のヤミ民泊では世界の祭典オリンピックを迎えられないからです。
世界中で民泊が行われていて、許可制をとらずにもっと気軽にやっている国もあるじゃないかと、反発の声も聞こえてきます。
そうは言っても、日本で営業するには日本の法律、ルールにのっとった形で行わなければならないということです。
しかしながら旅館業法という法律は昭和23年に作られたかなり古い法律で、現代には対応できなくなってきたという問題があります。
それでも現状は、先程述べたように観光客も空き家もオリンピックも待った無しという状況です。
民泊新法の成立
そこで新たに民泊に関する法律「住宅宿泊事業法」が成立しました。
2017年6月に成立したこの「住宅宿泊事業法」のことを通称「民泊新法」と呼びます。2018年6月より施行される予定です。
民泊新法では年間の宿泊日数などの新たな条件が設定されたものの、それまでの旅館業法よりもだいぶ要件が緩和され、注目されています。
⇒民泊新法パーフェクトガイド|民泊新法をわかりやすく解説!
特区民泊
民泊は現在、大きく3種類に分けられています。
- 旅館業法による民泊
- 民泊新法による民泊
- 特区民泊
1と2は上記で説明してきました。ここでは3の特区民泊について簡単に解説します。
特区民泊とは国家戦略特別区域として指定された地域で、さらに民泊条例を制定した自治体の中でのみ営業できる民泊です。
2017年8月現在では
- 東京都大田区
- 大阪府の一部
- 大阪市
- 北九州市
- 新潟市
の5つの地域が特区に指定されています。
特区民泊は旅館業法の対象から外されているので、厳しい規定をクリアする手間や費用をかけることなく簡単に民泊を始められるというメリットがあります。
その反面、最低宿泊日数が2泊3日(大田区は6泊7日)という新たな条件が設定されていて、なかなか活用しづらいという状況です。
国の成長戦略の柱のひとつで、地域限定で様々な規制を緩和して、実験的に事業を行い、そこで得たノウハウを全国的に活用するというものです。ビジネスのしやすい環境を整備して経済成長に繋げていこうという取り組みです。
まとめ
民泊はいま世界中で広がり、日本にもその波がやってきています。
来日観光客の宿泊施設不足の問題と、空き家問題を一気に解決する救世主として、この先も2020年の東京オリンピックに向かって加速度的に普及していくことが予想されます。
一方、民泊は制度としての法律の整備が整っていない状態で、無許可営業や、外国人との生活習慣の違いによるトラブル、施設の周辺近所のゴミや騒音問題などが取り上げられており、今後新たな問題が出てくることも考えられます。
何よりも民泊を利用する宿泊者が安心安全に使えるようになるためには一定のルールづくりが必要なはずです。
正しい知識を身に着けて民泊ビジネスのチャンスをつかみましょう。