民泊には旅館業法上の簡易宿所営業が適している理由

 

現在の法律では、国家戦略特区ではない地域で民泊を始める方法は、ほぼ一つしかありません。

それは旅館業法に定められている「簡易宿所営業」の許可をとって始める方法です。

「ほぼ一つ」と書いたのには、わけがあります。

それは、他にも選択肢がないわけではないからです。

この記事では、民泊を始めるための一般的な方法である、簡易宿所営業許可をとる方法以外の方法について解説していきます。

この記事を読むことであなたは、なぜ一般的に簡易宿所営業が民泊に適しているかが理解できます。

 

目次

他の選択肢とは

簡易宿所営業の許可以外の方法はざっと5つあります。

  1. イベント民泊
  2. 民泊新法(住宅宿泊事業法)での民泊
  3. ホテル営業
  4. 旅館営業
  5. 下宿営業

1つずつ特徴を解説していきます。

 

1.イベント民泊

まず一つ目はイベント民泊です。

これは民泊ではありますが、事業としてやっていくという感覚ではありません。

その名の通り、イベントに付随する民泊ですので、その地域にイベントがなければそもそも自分の意志で始めることができないものです。

イベント民泊とは簡単に言うと、イベントが開催される時だけ一般の住居の部屋を貸し出すことです。

イベントというのは、阿波踊りなどの全国的に有名な地域主体のものや、アイドルグループのコンサート2daysなどの音楽イベントなどです。年間でスポット的にその数日間だけ、日本全国あるいは世界からも人が集まるような催しのことです。

イベントがあってもその自治体がイベント民泊をやる意欲がなければ民泊提供者の募集は行われません。

イベント民泊についてコチラでくわしく解説しています。読んでいただければより理解が深まります。
コンサート会場周辺もOK!イベント民泊とはなんですか?

ちなみに私の住む静岡県では、毎年11月に大道芸ワールドカップという催しが大々的に開催されます。11月初旬の連休を巻き込むようなかたちで静岡市の街中で4日間にわたって催されるイベントです。
ワールドカップの名の通り、世界中から大道芸のパフォーマーがやってきて賑わいます。また、大道芸には言葉の壁が関係ないものが多く、外国人のお客さんも非常に多いです。
近年では200万人以上の来場者があり、もちろん周辺ホテルは予約で一杯になりますので条件は揃っているように思うのですが、イベント民泊の設定は無いようです。。。

 

脱線してしまいました。

以上のことから、イベント民泊はビジネスとしては成り立ちません。どちらかというと、そのイベントの周辺お祭りの一部というような感じでしょうか。ホストをされるみなさんも、毎年この時期がまたやってきたね。というような楽しみ方はできると思います。

 

2.民泊新法(住宅宿泊事業法)での民泊

ふたつめは民泊新法(正式名称は住宅宿泊事業法)による民泊です。

この法律は2017年10月現在、まだ施行されていません。ですのでこの民泊を始めることはできませんが、他の方法論としてリストに載せました。

2018年6月に施行予定で、急ピッチで法整備が進んでいるところです。

明らかになっている部分でネックとなるのは年間180日しか民泊として営業できないということです。

宿泊施設は稼働率が「いのち」です。180日全部お客さんの予約で埋まったとしても、年間とおしてみればマックスで稼働率50%です。

あとの50%をどうやってビジネスにするか、が最大の問題点です。

新法施行を心待ちにする人がいる中で、始まってみたら思っていたよりも全然使いづらい制度だった。。なんていうことも予測しながら準備していかなければならないと思います。

以上のことから、現在では新法での民泊は始めることができません。

 

3.ホテル営業

ホテル営業とは、簡易宿所営業と同じく、旅館業法の中のひとつの営業形態です。

說明が前後してしまいますが、ちょっとここで旅館業法の他のものも紹介させてください。

旅館業法上の宿泊施設の許可は4つあります。

  1. ホテル営業
  2. 旅館営業
  3. 簡易宿所営業
  4. 下宿営業

この中の3番が民泊に向いている許可である簡易宿所営業です。

それ以外が今回テーマにしているそれ以外の(民泊に向かない)営業許可の種類です。

本題に戻って、

ホテル営業とは、洋式の構造および設備を主とする設備を設けてする営業とされています。

民泊を始める場合にハードルとなる要件としては、

  • 客室が10室以上必要
  • 客室の広さが9㎡以上
  • 玄関帳場(フロント)の設置

があります。

普通の民家で民泊をしたい場合に客室10室はナカナカ取れないと思います。また、フロントの設置にもある程度の面積をとられてしまいます。

建物が大きくなればなるほど、消防法で定められた基準のハードルもあがり、消防設備に多額の費用がかかることにもなります。

以上のことから、通常は民泊をやるためにはホテル営業の許可をとるということは考えにくいです。

 

4.旅館営業

旅館業の許可のひとつ、旅館営業です。ホテル営業が洋式なら旅館営業は和式です。

といっても、旅館業法は古い法律で、現在では洋式・和式の設備という概念の境目ははっきりしなくなり、あまり意味がないものになってきているので、ホテル営業と旅館営業はひとつに統一される方向で検討されています。

旅館営業の民泊を始める場合にハードルとなる要件は

  • 客室が5室以上必要
  • 客室の広さ7㎡以上
  • 玄関帳場(フロント)の設置

があります。こちらも客室数とフロントがネックとなり、旅館営業が民泊に向いているとはいえません。

 

5.下宿営業

下宿営業とは「施設を設け、一ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう」とされています。

旅館業の許可の中でも他の3つとはタイプが異なり、1ヶ月以上の期間の宿泊を想定しています。

民泊で1ヶ月以上滞在する人もいないことはないと思いますが、一般的ではありません。

特区民泊の7泊8日の規制さえキツイと言われているのにわざわざ下宿営業を選ぶことはありませんので、民泊には向いてるといえません。

 

最後に簡易宿所営業

簡易宿所営業は客室を多数の宿泊者で共有することを想定しています。

「簡易」の名のとおり、ホテルや旅館よりも客室数や設備の規定がゆるく設定されています。

また、民泊向けという認識が既にありますので、民泊を普及させていこうという流れの中で規制緩和が行われています。

民泊は新しくうまれた宿泊施設のスタイルですので、何十年も前につくられた旅館業法では想定していませんでした。

ですので半ば強引に民泊を簡易宿所営業に当てはめたような経緯があります。

 

まとめ

民泊を始めるには特区以外の方は旅館業の許可が必要です。

旅館業の許可であれば上で述べてきたホテル業でも旅館業でもいいのですが、民泊に適しているのは簡易宿所営業です。

そう簡単ではありませんが、旅館業の許可の中ではハードルは低めに設定されています。

きちんと許可を取ってあなたのビジネスを堂々と展開させていきましょう。

 

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この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

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